下肢静脈瘤の分類の仕方はさまざまですが、大別して二つに分類することができます。一つはボコボコとした血管が浮き上がるタイプのもの、もう一つは青や赤の血管が脚の表面に目立つものです。
前者に対しては、以前は治療する際に入院が不可欠でした。最近は、日帰りで治療する医療機関が増えてきましたが、1997年頃まではその根治手術であるストリッピング手術を日帰りで行う発想など全くなかったのです。
1998年頃より、それまでどこでも行われていなかった下肢静脈瘤の根治手術であるストリッピング日帰り手術がごく一部の医療機関で始まりました。その後、日帰りストリッピング手術は徐々に普及してきました。
さらに、2000年代には、レーザー治療が下肢静脈瘤の治療に応用されるようになり、下肢静脈瘤の最先端の治療として注目を浴びました。 レーザー治療は、医療機関への滞在時間が短い外来手術での治療が可能で、ストリッピング手術に比べて体へのダメージが少なく回復が早いこと、また初診当日に手術をしてそのまま帰宅することも可能であることが特徴として挙げられます。ボコボコと目立つタイプの下肢静脈瘤の治療は、従来の入院によるストリッピング手術から、日帰りストリッピング手術、そしてレーザー治療(エンドレーザー治療、血管内レーザー治療、血管内レーザー焼灼術と複数の呼称があります)へと進化してきました。
一方、青や赤の細かい血管が目立つ、網目状やクモの巣状の静脈瘤に対しては、従来は有効な治療法がないとされていましたが、硬化療法が普及しだしてからは治療の対象になってきました。その後、体外照射タイプのレーザーがこのタイプの下肢静脈瘤に有効であることがわかり、これらのタイプの下肢静脈瘤についても、レーザー治療で日帰り治療ができるようになりました。すなわち、現在は、あらゆるタイプの下肢静脈瘤が、入院せずに外来で治療できるようになっています。
治療方法が多種多様になった現在でも、患者さんにとって負担が少なく、跡が残りにくい治療法が日々研究されています。
下肢静脈瘤の治療法
圧迫療法
圧迫療法とは、圧迫(弾性)包帯や弾性ストッキングを用いて足全体を適当な圧で圧迫することにより、静脈の還流を助け、血液の循環をスムーズにして、下肢静脈瘤の改善や予防を目的に用いられる療法です。
最近、医療用弾性ストッキングはデザインや機能がいろいろと改良され、サイズや仕様にバリエーションが増えてきています。
弾性包帯や弾性ストッキングを用いることで足を圧迫する治療は、セルフケアができるという利点はありますが、特にストッキングは弾性がかなりあるために履くのが結構大変です。医療用弾性ストッキングの目的は、あくまで、静脈瘤の進行の防止および現状維持、または治療後の補助療法としての使用であり、下肢静脈瘤そのものを治せるものではありません。
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弾性包帯や弾性ストッキングを用いることで足を圧迫する治療は、セルフケアができるという利点はありますが、特にストッキングは弾性がかなりあるために履くのが結構大変です。医療用弾性ストッキングの目的は、あくまで、静脈瘤の進行の防止および現状維持、または治療後の補助療法としての使用であり、下肢静脈瘤そのものを治せるものではありません。
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硬化療法
静脈瘤を起こしている血管の中に硬化剤を注射して、血管の内側の壁を癒着させる方法です。癒着して固まった血管は、次第に萎縮して消えてゆきます。硬化療法は、手術のように傷を残すことがない、また体への負担が少ないことがメリットですが、大きな静脈瘤には有効ではありません。再発率が高く、注射をした場所にしこりや痛みがしばらく発生し、色素沈着が消えるのに1-2年要することが多いのが欠点です。経験の豊富な専門医の施術を受けることが理想です。
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高位結紮術
高位結紮術(こういけっさつじゅつ)とは、皮膚に小さな切開を入れ、弁が壊れ血液の逆流が始まっている個所を縛って切り離し(結紮)、血液の逆流を止める治療方法です。
高位結紮術は局所麻酔で実施できるため、日帰り治療が可能という利点がありますが、これのみでは静脈瘤が十分に治らなかったり、再発率が相応に大きいことが分かっています。そのため、切開を増やして結紮部位を増やしたり、硬化療法を同時に行うこともあります。
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ストリッピング術
弁が壊れ逆流を来している静脈を引き抜いてしまう手術法です。一般的には脚の付け根と下腿内側の2箇所に切開をいれ、対象となる静脈内に特殊はワイヤー状の器具を入れて固定し、それを使って静脈を引き抜く手法です。脚の付け根と足首の2か所の切開が必要で、大腿から下腿にかけての広範囲に刺激があるため、般的には全身麻酔か下半身麻酔を用いて入院下で実施されます。
しかし麻酔の技術が向上してきた昨今では、静脈麻酔や局所麻酔を応用して、日帰りでストリッピング手術実施する医療機関も多くなりました。
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レーザー治療
血管内レーザー焼灼術
細いレーザーファイバーを血管に挿入して静脈瘤を閉塞させる下肢静脈瘤の新しい治療方法です。肌を傷めずに異常血管のみを消失させることができ、体に負担のかからない画期的な治療法ですが、長い間日本国内では健康保険が適応されておりませんでした。
しかし、2011年・2014年と保険で認可されたレーザー治療(波長980nm・1470nm)の実施が可能となり、レーザー治療は一層普及すると思われます。 波長が長い(数字が大きい)レーザーの方が水への吸収率が高いことが知られていますが、最近のデータでは、2000nmのレーザーによる治療が、最小の照射熱量、最短の手術時間で、最も治療成績が良いことが示されており、合併症も少なく、患者さんにとってさらに負担の少ない手術が可能になると考えられます。
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ロングパルスYAGレーザー(体外照射タイプ)
ロングパルスYAGレーザー(体外照射タイプ)とは、血管の壁を変性し収縮させる性質を持っているレーザーを一定間隔で断続的に照射(パルス照射)することで、血管を縮ませ閉鎖させる治療法です。網目・クモの巣状の小さな静脈瘤に対して用いられます。従来の静脈瘤の治療法に比べ、短時間での治療が可能で体への負担も少なく、治療による後も目立たないなどの利点を多く持っていますが、健康保険の適用ではありません。>> ロングパルスYAGレーザーの詳細はこちら
RF(高周波/ラジオ波)治療
RF治療(血管焼灼術)とは、レーザー治療と同様に、静脈瘤の原因となる逆流血管の中にカテーテルを挿入し血管内腔を閉鎖して逆流を止める治療法です。 従来のストリッピング手術に比べて体へのダメージが少なく日帰り治療が可能な点ではレーザー治療と同等です。
そもそもRFはレーザー治療より前から行われていました。
しかし、治療対象である逆流血管の閉塞率が低く下肢静脈瘤が再発しやすいため、あまり普及しませんでしたが、その後改良が加えられ、血管の閉塞率が従来の保険適用レーザー(980nm)と同等になったと判断されて2014年7月から保険収載となりました。 RFの利点は、手術操作が比較的楽なのと術後疼痛が少ない点で、欠点は、血管径の比較的大きなものは閉塞率がレーザーに比べて低い可能性があるのと逆流部分が短い静脈瘤や不全穿通枝などへの焼灼が困難なので治療できる静脈瘤の適用範囲がレーザーに比べて狭いことです。
しかし、治療対象である逆流血管の閉塞率が低く下肢静脈瘤が再発しやすいため、あまり普及しませんでしたが、その後改良が加えられ、血管の閉塞率が従来の保険適用レーザー(980nm)と同等になったと判断されて2014年7月から保険収載となりました。 RFの利点は、手術操作が比較的楽なのと術後疼痛が少ない点で、欠点は、血管径の比較的大きなものは閉塞率がレーザーに比べて低い可能性があるのと逆流部分が短い静脈瘤や不全穿通枝などへの焼灼が困難なので治療できる静脈瘤の適用範囲がレーザーに比べて狭いことです。